研究概要 |
本研究の目的は,大別すると,以下の2つである.まず,第一の目的は,2007-08年度の先行研究で開発・蓄積したCore-Periphery(CP)モデル解析の方法論をさらに発展させ,a)より一般的な空間条件,b)より現実的な経済・産業条件,の下での空間的集積経済モデルの理論を構築することである.より具体的には,a)では,2次元空間上のN都市集積経済モデル(eg.,CPモデル)の分岐特性を解明する.この解析では,輸送費用に関して均質な空間での分岐解析から始め,消費者の異質性,各種調整ダイナミクス,各種境界条件等の影響を明らかにする.また,b)では,CPモデルに以下の産業別特徴を導入したN都市・M産業(N,M>2)一般モデルを構築する:産業別の財の輸送費用・代替弾力性・規模の経済.さらに,中間財を導入(産業連関を考慮)したモデルを構築し,その分岐特性を解明する.さらに,第二の目的として,CPモデルに都市の確率的メカニズムを導入したモデルを構築し,Zipf法則との整合化を図る.これは,確率動学CPモデルに多様な産業の技術革新メカニズムを導入することで実現する.本年(2010年)度は,2009年度に確立した新たな安定性解析の方法及び群論的分岐理論に基づく分岐解析法を基に,a)の2次元空間CPモデルに対して,Loshのk=3,4,7システムに対応する集積パターンの創発メカニズムを理論的に完全に解明した.これは,様々なCPモデル変種に対してのみならず,都市内集積モデルにおいても同様の特性が成立すること(及びそのための条件)が示された.また,b)については,理論的解析のためのプロトタイプとして,M産業・都市内集積モデルを構築し,多産業集積パターンの階層原理が創発しうることを示した.
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