研究概要 |
底生微細藻類は干潟における主要な一次生産者である一方,底質にO_2や細胞外高分子物質(EPS)を供給し,分解者であるバクテリアを活性化させることによって有機物の分解を促進させる役割も担っていると考えられている.既往の研究のなかで干潟メソコスム実験系において非遮光系では遮光系と比較して有機物の蓄積が抑制されたという報告もあり,底生藻類の代謝が微生物群集の呼吸活性を増大させ,それによる有機物分解が藻類の有機物生産よりも卓越したためと考察されている.そこで本研究では干潟生態系において底生微細藻類が有機物の生産と分解のバランスに作用するプロセスと,その結果堆積有機物収支に与える影響について検討し,以下のような結論を得た。 ・底生微細藻類の光合成がバクテリアの有機物分解活性に与える影響は,底質へのO_2供給によるものではない. ・干潟においては砂質,砂泥質,泥質といった底質性状で区別できる場所に関わらず,光合成によって生産された有機物はバクテリアによって生産速度とほぼ同じ速度で分解される. ・干潟底質中の有機物の大部分が難分解性であり,それらの有機物はDOを供給しただけでは分解されない. ・干潟底質中の生態系において,底生微細藻類が生産した有機物はバクテリア活性の制限要因となる資化分解基質であり,底生微細藻類の生産量が大きくなるとそれにともなって分解量も大きくなるため,結果的に有機物収支に影響が現れない. ・底生微細藻類の光合成があることでバクテリア活性が高く保たれ,外来性有機物の分解が促進される.
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