研究概要 |
現在,世界的に多くのナノ粒子が産業利用目的として精力的に開発・製造されている。一方でナノ粒子の生態影響に関する研究報告の数も増加しており,ナノ粒子を取り扱う作業者や,環境中への排出による一般人の健康影響に対する懸念が徐々に高まりつつある。本研究ではナノ粒子の一つとしてナノシリカ粒子に着目した。シリカ粒子は今後も使用量が増大し続けることが見込まれる一方で,そのリスク評価に関しては,対応が遅れている。そのため,ナノシリカ粒子のマウスへの投与実験を行い,その体内動態を把握し,リスク評価に有用な体内動態モデルの構築を目指す。また,粒径の違いによって動態が異なることが予想されるため,今年度は2種類の粒径の粒子を用いて,粒径による体内動態の違いを調査することとし、以下の研究課題を設定した。 1. 粒径44nm及び100nm以上のシリカ粒子をマウスに尾静脈投与または気管内投与することで体内動態を把握する。 2. 投与実験のデータを基にマウスにおけるシリカ粒子の体内動態評価モデルを構築する。 研究成果は以下の通りである。 ・ マウスの気管内投与実験から,ナノシリカ粒子は肺から血液中へ移行する量は多いが,その多くは短時間で排泄される一方,マイクロシリカ粒子は肺から血液中への移行量が少ないものの,排泄されるまでに時間を要する。 ・ 連続投与実験においては、ナノシリカ粒子では心臓や腎臓において、またマイクロシリカ粒子では肝臓での蓄積傾向が確認された。 ・ また,マウス・ヒトともにシリカ粒子の体内動態をある程度再現できるPBPKモデルが構築された。
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