研究概要 |
本研究では,水環境中における抗生物質および抗ウイルス剤の動態を明らかにするとともに,薬剤耐性菌による水系汚染を明らかにし,抗生物質濃度や下水処理水,畜産排水等の流入と薬剤耐性菌の存在との関連について考察することを目的とする。平成21年度は,抗生物質および抗ウイルス剤の分析万法を検討するとともに,水環境中における抗生物質および抗ウイルス剤の動態を把握することを目的に研究を実施した。 抗生物質の分析方法の開発については,医療用として使用量が多いマクロライド系,ニューキノロン系等の抗生物質とともに,家畜用として使用量が多いテトラサイクリン系等の抗生物質を対象として,LC/MS/MS(高速液体クロマトグラフータンデム質量分析計)を用いて他の医薬品類とめ同時分析法を開発した。また,抗ウイルス剤については,A型インフルエンザ治療薬として,我が国において以前から使用されているアマンタジン(Amantadine)と,近年使用が急増しているタミフル(Oseltamivir)を対象として分析方法の開発を行った。 河川流城における抗生物質および抗ウイルス剤の動態を明らかにすることを目的として,関西地域の重要な水源となっている淀川流域においてサンプリングを実施した。、その結果,淀川に流入する支川や下水処理場放流水について,抗生物質および抗ウイルス剤濃度が高い値が示されていること,淀川流域に流入する抗生物質および抗ウイルス剤の多くは,下水処理場経由で流入することが明らかとなった。また,下水処理場において抗生物質の挙動を調査したところ,我が国において使用量の多いニューキノロン系抗生物質のLevofloxacinは,下水処理場において高い除去率となっているのに対し,マクロライド系抗生物質のClarithromycinは,下水処理過程において十分に除去されずに河川流域に放流されていることが明らかとなった。
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