研究概要 |
本研究では,大空間構造の基本形として二次元円弧屋根を対象とし,境界層乱流中で屋根に作用する非定常空気力の特性を把握するため,強制振動模型を用いた風洞実験を行った。ライズ・スパン比(r/S)の異なる2種類の模型(r/S=0.15,0.20)に対し,振幅,振動数,風速を変化させ,気流中で屋根に作用する風圧(12点),屋根変位(1点)を同時測定し,屋根に作用する非定常空気力を「空力剛性」並びに「空力減衰」として評価した。また,PIV(Particle Image Velocimetry)を用い,振動している屋根まわりの流れ場(瞬間的な風速や渦度分布など)も併せて測定し,非定常空気力の特性と流れ場の関係,非定常空気力発生のメカニズムを考察した。本年度では,昨年度確立した実験方法を用い,系統的な風洞実験を東北大学および建築研究所にて行った(非定常空気力に関する実験は主として東北大で,PIVを用いた実験は建築研究所にて)。PIV実験にて,静止時および振動時の屋根まわりの流れ場を可視化し,振動時においても流れの剥離点位置がそれほど変化せず,振動が全体の流れ場に大きな影響を与えないことが分かった。また,非定常空気力に関する一連の風洞実験結果に基づき,空力減衰係数および空力剛性係数を無次元風速の関数として表した。 風洞実験と併せLES(Large Eddy Simulation)を用いた数値流体解析(Computational Fluid Dynamics)も実施した。今年度は,流入風の作成方法,最適な乱流モデル,移動境界条件の処理方法など検討などを検討し,平均風圧係数および変動風圧係数分布に関しては概ね風洞実験を再現できるようになり,非定常空気力の把握のための系統的なシミュレーションを行うための準備が概ね整った。
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