研究概要 |
本研究の主目的は,無補強組積造(URM)壁を有するRC造架構を対象に,地震後に目に見える損傷である「残留ひび割れ幅」と建築物が保有する「地震被災後の耐震性能(残存耐震性能)」の関係を静的載荷実験などを通じて明らかにし,国外でも直ちに適用可能な被災度判定手法の実用化を目指すものである, 本年度は上記の目的を実現すべく,昨年度(平成22年度)に製作した剛梁型試験体,柔梁型試験体やプリズム試験体を用い,面内方向への静的載荷実験を実施した.以下に実験結果および検討結果を示す. 1.URM壁付きRC造縮小架構の静的載荷実験 本実験の特徴としては,RC造架構に内蔵されたURM壁の破壊メカニズムや架構全体への耐力寄与分を詳細に調べるため,URM壁の全てのコンクリートブロック(CB)ユニット(計116箇所)に3軸歪ゲージを貼り付けたことである.これらの実験結果より,3軸歪データから精算した各CBユニットの主歪の方向および大きさを用い,架構の変形レベルに応じたURM壁の対角圧縮ストラットの形成角度や幅などを定量的に算出した. 2.コンクリートブロックのプリズム圧縮試験 JRM壁の対角圧縮ストラットの形成角度(45°,37.5°,300°,22.5°の4種類)を模擬したプリズム圧縮試験を実施した.これらの試験結果から得られた応力度-主歪関係と,上記1.で得られたURM壁の主歪データを詳細に比較・検討し,本研究の目的を実現するために不可欠であるURM壁の架構全体への耐力寄与分を定量的に算出した. 3.ひび割れ幅の計測 本研究の検討対象である各部材(柱,梁,URM壁)のひび割れ幅をクラックスケールを用い丁寧に計測した。これらの結果と,上記の2.で明らかになったURM壁付きRC造架構の耐震性能から,本研究の最終目的であるURM壁付きRC造架構の残存耐震性能の評価手法やそれに基づく被災度判定手法を提案する予定である.
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