本年度実施予定であった実施計画I「吊りボルトピッチをパラメータとする天井試験体による動的実験」では、吊りボルトピッチが大きくなることにより、野縁受けを支持する間隔が長くなり、野縁受けの鉛直支持能力が大きく変動・低下することが明らかとなった。また、この野縁受けの支持能力は、当研究室にて開発してきた曲げ捩りを考慮した梁要素にて精度よく再現することが可能であることを確認した。ただし、もうひとつの実験の目的であったクリップのすべり・脱落挙動が促進されるかいなかについては、定性的には促進されることが確認されたが、これを定量的に把握するまでには到らなかった。次年度、クリップ接合部の要素実験を通して定量的な把握を行う。 同実施計画II「損傷形式に対する損傷箇所を抽出した要素実験」では、スプリンクラー配管の典型的な接合具を抽出し、鋼管ネジ部での破断現象に関する実験を実施した結果、実際の地震被害に見られるような破断現象は低サイクル疲労破壊によって発生することを再確認した。また、配管からの漏水は完全な破断に到る前の僅かな損傷レベルでも生じることが確認されたことから、損傷の定義としては破断ではなく漏水発生を以って定義する必要があることも明らかとなった。ただし、実際のスプリンクラー設備において漏水するためのデータ、すなわち、損傷発生確率分布などを求めるには、試験体数が不足しており、次年度において試験体数を増やして実験する必要があることも確認された。
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