研究概要 |
本研究は,既存の鉄筋コンクリート造柱と補強袖壁の連成抵抗機構に着目し,破壊機構の理論的な解明を通して,袖壁補強工法の耐力評価法を提案することを目的とする。連成抵抗機構とは,既存の柱と補強袖壁の抵抗モーメントの連成を考慮したメカニズムであり,耐力評価の難しい袖壁付き柱の破壊のメカニズムを理論的に明らかすることができる。補強袖付き柱の応力と耐力を理論的に評価できると考えられる連成抵抗機構に着目することで,袖壁付き柱の耐力評価方法、特に袖壁補強された柱のせん断強度、接合部の設計方法など現状の問題を解決できるのではないかと期待される。ひいては,耐震補強だけでなく,設計時の袖壁の耐力評価が可能になり,柔軟な設計が実現できる。 平成21年度では,柱の両側に袖壁を接合した袖壁補強柱を対象に,水平加力実験を行った。実験パラメーターは、鉛直接合の鉛直接合筋量(比)、補強される柱のせん断余裕度、補強袖壁の壁補強筋比(量)である。鉛直接合筋を十分に配すると,一体打の袖壁付柱と同等の耐震性能を有していること、柱のせん断余裕度が大きいほど袖壁補強の効果は大きくなること、袖壁の壁補強筋比は耐力にさほど影響しないことを確認した。これらの実験結果を踏まえ、袖壁補強柱の応力状態から,一体性を確保するために必要な鉛直接合筋量を導出する条件を提示し,実験結果と良好に対応していることを示し、袖壁補強柱に関する上記パラメータと,必要接合筋の関係を定量的に評価し,一体性を確保するための設計法を提示した。 提案した応力抵抗機構がH21年度に実施した袖壁形状と、袖壁の(長さ/厚さ)比、(袖壁長さ/柱せい)比等が異なる、袖壁が片側についた場合にも適応可能かを調査する必要がある。
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