研究概要 |
本研究は,既存の鉄筋コンクリート造柱と補強袖壁の連成抵抗機構に着目し,破壊機構の理論的な解明を通して,袖壁補強工法の耐力評価法を提案することを目的とする。連成抵抗機構とは,既存の柱と補強袖壁の抵抗モーメントの連成を考慮したメカニズムであり,耐力評価の難しい袖壁付き柱の破壊のメカニズムを理論的に明らかすることができる。補強袖付き柱の応力と耐力を理論的に評価できると考えられる連成抵抗機構に着目することで,袖壁付き柱の耐力評価方法、特に袖壁補強された柱のせん断強度、接合部の設計方法など現状の問題を解決できるのではないかと期待される。ひいては,耐震補強だけでなく,設計時の袖壁の耐力評価が可能になり,柔軟な設計が実現できる。 平成22年度は,袖壁長さの長い両側袖壁補強柱試験体(袖壁長さ/柱せい=1.5)を4体,片側袖壁補強柱試験体を2体,既存の袖壁付柱に対して,直交方向に袖壁を増し打ちした試験体を2体,計8体の試験体を製作し,水平加力実験を行った。試験体の縮尺は1/2である。試験体のパラメータは鉛直接合筋比,既存柱の破壊形式である。袖壁長さの長い両側袖壁補強柱試験体では,鉛直接合筋比の大小や既存柱の破壊形式によって,全体の破壊性状や最大耐力が異なることを実験的に明らかにし,力の釣り合いに基づいた終局強度評価式によって,最大耐力を適切に評価できることを示した。片側袖壁補強柱試験体では,鉛直接合筋比によって,最大耐力が若干変わるものの,剛性や変形性能には影響しないことを実験的に明らかにした。袖壁増し打ち試験体では,増し打ち袖壁と既存袖壁が一体となって挙動することを確認した。 平成23年度は,過去に行った実験結果を踏まえ,袖壁補強工法の実用的な設計方法を提案していく予定である。
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