研究概要 |
本研究は,既存の鉄筋コンクリート造柱と補強袖壁の連成抵抗機構に着目し,破壊機構の理論的な解明を通して,袖壁補強工法の耐力評価法を提案することを目的とする。連成抵抗機構とは,既存の柱と補強袖壁の抵抗モーメントの連成を考慮したメカニズムであり,耐力評価の難しい袖壁付き柱の破壊のメカニズムを理論的に明らかすることができる。補強袖付き柱の応力と耐力を理論的に評価できると考えられる連成抵抗機構に着目することで,袖壁付き柱の耐力評価方法、特に袖壁補強された柱のせん断強度、接合部の設計方法など現状の問題を解決できるのではないかと期待される。ひいては,耐震補強だけでなく,設計時の袖壁の耐力評価が可能になり,柔軟な設計が実現できる。 平成23年度は、これまでに行った実験結果を取りまとめ、袖壁補強工法の実用的な設計方法を提案した。この設計法は、袖壁部分のアーチ抵抗機構、鉛直接合筋による抵抗機構、既存柱の抵抗機構をそれぞれ算定し加算することで、袖壁補強柱の強度を算定でき、既存柱と補強袖壁が一体的に挙動する鉛直接合筋量が示されるとともに、鉛直接合筋比と袖壁が負担できるせん断応力度の関係を明示的に算定できるようになっている。 一方、袖壁補強を施した場合、梁の強度が相対的に弱くなり補強効果が十分に発揮できなくなることが予想され、袖壁補強に合わせて梁補強を行った場合の効果を確認するパイロット実験を行った。袖壁補強された既存の柱・梁接合部は、そこに作用するせん断力が小さくなること、梁を補強することによって袖壁補強の効果を高くすることが出来ることなどが確認された。しかしながら、補強梁を既存梁に梁幅を増やすように接合する場合、両者のせん断伝達に偏心距離が生じ面外にねじれが発生した。せん断、面内曲げ、面外曲げを考慮した補強梁と既存梁の接合方法、接合形式による強度抵抗メカニズムを今後検討する必要がある。
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