研究概要 |
旧基準による鉄筋コンクリート(RC)建物の耐震性を評価するうえで重要なのは,柱の崩壊過程や崩壊時の変形について把握し,軸力保持能力を正確に捉えることである。地震のような水平力により柱がせん断破壊すると,それにかかる軸力は梁を介して周辺の健全な柱へ移動する。過去にせん断破壊型RC柱の崩壊性状に関する実験は多数行われているが,せん断破壊に伴う軸力の減少(周辺柱への軸力の移動)を考慮した実験は非常に少ない。そこで本研究では,せん断破壊を生じやすい短柱を対象として,せん断破壊に伴って軸力が減少する場合の崩壊実験を行い,軸力が一定の場合と比較した。 試験体は計9体であり,すべて実大とした。柱断面寸法(b×D)を450×450mm,内法高さ(h_o)を900mmとした(h_o/D=2)。実験パラメータは,(1)主筋比Pg,(2)せん断補強筋比Pw,(3)軸力比,(4)載荷履歴,とした。ここで軸力比については,破壊の進行に伴って軸力比を0.16から0.08に減少させた実験を行い,軸力比が0.16で一定の場合と比較した。 得られた主な知見を以下に示す。 1) Pw, Pg,載荷履歴,軸力を減少させる点に関係なく,軸力を減少させた柱は,一定軸力のものに比べ,崩壊水平変形が大きくなる。また,軸力を減少させた後の水平力の低下度合いや鉛直変形の増加の度合いが軸力を減少させる前に比べ小さくなる。 2) 軸力を減少させる点が早いほど大きな水平変形,鉛直変形で崩壊または実験終了した。 3) 非常に崩壊に近い点で軸力を減少させても,崩壊または実験終了時の水平変形は一定軸力の試験体に比べ約2~6倍程度も大きくなる。 4) 繰り返し載荷によって一定軸力,減少軸力の両者共に崩壊水平変形が単調載荷の場合より小さくなった。また,軸力を減少させる場合では軸力減少後の水平力の増加が大きくなり,水平力低下の度合いも小さくなった。
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