本研究では、壁面の部位音響性能として従来の残響設計で用いられる吸音率に加えて、新たに音響反射の拡散性指標を導入し、部位レベルの拡散性を制御する方法論とさらにはそれに基づく空間全体の音響設計スキームの構築を目指す。より具体的には、模型実験・数値解析・聴感実験を通じて以下を達成する。 ●拡散性指標に基づく拡散壁の形状設計方法の確立 ●各種音響空間における拡散壁配置に関する設計スキームの構築 当該年度は初年度として、5月に全体会合を開催し、研究の全体計画と各課題の進め方を議論し、役割分担を確認した。その後は各ユニットで以下の課題群に取り組んだ。 課題1a.:(東大)拡散壁の表面形状を系統的に選定した上で模型製作を行い、現有の測定システムを用いて乱反射率測定を実施した。過去の測定データも統合し、乱反射率のデータベースを作成した。 課題2a:(東大)模型実験用の直方体室と内部に配置する拡散壁の製作を行い、拡散壁の面積・配置に関する影響を検証した。(新潟大)模型実験に対応した解析モデルを設定し、FVTD法による音場計算を実施した。 課題2b:(東大)実在コンサートホールの数値モデルに壁面の拡散処理に関する設計変更を施し、幾何音響シミュレーションにより室内の各種音響指標を計算した。次年度の聴感実験に用いる室内インパルス応答の算出も開始した。 課題3a:(熊本大)課題2aの聴感実験用に、無響室内に6ch音場再生システムを構成した。 課題3b:(東大)課題2bの聴感実験用に、無響室内に6ch音場再生システムを構成した。
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