1.メソスケール解析による海風の鉛直プロファイルの分類とその発生頻度の調査 夏期の海風には都市のヒートアイランド現象を緩和する効果がある。ただしこの効果はその時々の海風の性質、特に風速と温度の鉛直分布に大きく依存するはずである。また近年、各種ヒートアイランド対策の効果を把握するためのCFD解析も行われているが、こうした解析で適切な入力風の境界条件を与えるためにも、海風の風速と温度の鉛直分布を知っておくことは重要である。これまで多くの風観測により強風時の平均風速の鉛直分布が、べき指数則に従うことが明らかになっているが、ヒートアイランド現象が深刻となる夏季弱風時の風速や温度の鉛直分布は明確となっていない。そこで、メソスケール解析を実施し、得られた風速と温度の鉛直分布のデータをクラスター分析によって分類し、それぞれのパターンの発生頻度や気象との関連性を明らかとした。 2.減速する鉛直プロファイル、捩れた風向が、都市街区により消費される冷熱量に及ぼす影響の調査 我々は一連の風洞実験により、街区内の風通しを向上させ気温を低下させるためには、建物高さにばらつきを持たせて「鉛直方向の風の道」を確保することが極めて有効であることを見出した。しかし、その街区で海風の持つ冷熱を消費してしまえば、風下の地域では海風の恩恵が減少してしまうため、それを定量的に評価する必要がある。そのために、都市表面から大気への対流熱伝達率を都市形態パラメータの関数として一般化し、都市キャノピーモデルに組み込むことを目的としている。その第一段階として、まず風洞実験により都市形態が対流熱伝達率に及ぼす影響を把握するとともに、低Re数モデルを用いたCFD解析の対流熱伝達予測精度をこの風洞実験との比較により確認した上で、CFDを用いて対流熱伝達率を調べ、無次元パイナンバーを用いて一般化する作業に取り組んでいるところである。
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