(1)地域の計画課題の抽出:人口の安定している/安定していない都市雇用圏の要因に関して分析を行った。人口が安定しない都市雇用圏では、全体として中心都市ではなく郊外都市で人口が安定していない、中心都市および郊外都市で人口が安定していない傾向があり、特に郊外都市における人口安定の施策の必要性が指摘された。 (2)地域計画の意思形成の仕組みに関する考察:国土構造、地方都市構造、大都市構造を巡る政策論議において、アクター間の合理的見解対立の詳細と特徴を明らかにするために、テクストの構造化手法を構築し具体の事例に当てはめた。地方都市構造を巡る論議においては、メカニズム理解について実際には多く点で見解が一致している一方、問題認識と処方においては一致程度が低かった。 (3)都市圏のあるべき地域計画の提案 (a)都市圏における持続可能性指標:地域経済に重要となるイノベーション活動について全国イノベーション調査を地域別に集計し指標化を行った。また、特許データの伸び率と都市圏間の依存度を集計し地域指標を算出した。これらの指標に基づいて国土・地域政策の評価を行った。 (b)都市圏ごとの計画手段:逆都市化が大都市圏で最も早く進行すると考えられる関西地方において、課題に対応した政策手段の先進事例を調査・分析した。郊外地区で良好な居住環境のための規制と人口回復がトレードオフの関係になっている兵庫県川西市大和団地地区、高齢化が進んだ公営住宅に若年層を増やす取組を進める兵庫県神戸市・明石市明舞団地地区、都心回帰によって居住人口が増えるとともに新たな商業集積で賑わいが形成される大阪市中崎地区をケースとして取り上げ、必要な計画手段についてレビューを行った。地方都市圏については、水戸常磐地域を事例に広域空間コンセプトを提示した上で、人口の安定も視野に水戸市中心地区の新たな将来空間像を提案する実践的研究を行った。
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