欧米と比べ、日本の教育は学級あたりの生徒数、授業方法、多様性、柔軟性の点で先進的といえる状況ではないが、学校施設の整備は充実しており、計画やデザインでは優れた学校が多くみられる。教育との関連で限界を認識しながら、大きく3つの視点から、近年の小中学校施設について体系的な研究を行った。最終年度では、5年間に亘る研究を見直しながら、海外調査により補足を行い、研究全体の体系化を考慮すると共に、整合性を意識して洗練させた。 (1)先進事例における空間利用変化からみた学校施設計画:欧米の学校における先進事例について、教育体系と学校施設の関係、教室、教科教室、管理諸室など室構成を再検討し、簡易記述方法により平面形状、平面構成、教室配置の特色を整理した。日本の小中学校については、敷地条件、敷地形状、校舎配置との相互の関連性を捉えると共に、校舎における普通教室と特別教室の配置を校舎形状の観点から整理した。 (2)学習活動の多様化に対応する学習空間利用計画の方向性:日本の小学校を対象に、普通教室に隣接するオープンスペースにおける家具の種類と配置を調べ、典型的な家具配置を類型化した。また、授業時の活動利用状況を通して、教室ユニットにおいて普通教室の位置によりオープンスペースの授業時利用に差異が生じることを捉えた。 (3)授業編成の変革に対応する教室整備の方向性:教科教室型中学校について、選択授業、少人数授業、教員数を考慮して時間割を作成し、学級規模に応じた教科別必要教室数の算定方法を開発した。これにより、教科教室型運営では、学級規模が大きくなると、かなり少ない教室数で運営できることを示した。小学校の少人数学習授業は、学級を解体して新しい授業集団を編成するため、普通教室の他に教室が一時的に必要となる。習熟度別学習を中心に、学級数と展開数から、追加的に利用される教室とその位置を捉えた。
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