平成21年度は、準備段階として現在までに進めてきた事例調査を資料とし、集合住宅の大規模改修工事の評価を行うにあたっての、事例の条件となる各種データの客観的把握のためのスタディを行った。すなわち、立地・規模・建設時期・社会的環境・居住者の構成・建築的構成・建築物の状態などの具体的項目の整理を行った。 以上の結果に基づき、オランダにおける集合住宅の大規模改修事例について、現地調査を行った。オランダについては、公共集合住宅の大規模改修設計において、もっとも経験をつんでいる設計事務所、ロッテルダムのファン・シャーヘン建築設計事務所のパートナーである、クラース・ヴァールハイト氏及び、デルフト工科大学のフランチェスカ・リカルド博士と密接な連携をとって調査を進め、現地でのヒアリング調査・打ち合わせも行った。 大規模改修事例については、20事例以上の現地調査を行い、大きな収穫を得ることができた。これらは、日本には全く紹介されていない事例がほとんどであり、また、高齢者施設への転用事例なども数事例発見することができ、日本における集合住宅の大規模改修指針を策定するにあたって、大きく参考となることは間違いない。 現地調査を行った事例は、あわせて収集した図面等の資料も用いて分析し、大規模改修手法の類型化を行った。この結果は、平成22年度日本建築学会大会論文として投稿した。また、次年度以降の調査に備え、フランスにおける集合住宅の大規模改修事例に関する整理を開始した。
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