1. 東アジア中世における首都の変容と空間構造 南北朝を統一した室町幕府・足利義満と戦国の動乱を統一した近世権力・織豊政権それぞれの大規模開発により形成された首都京都の空間構造を比較、検討し、前者の特質を把握した。また首里と首都機能を分担した貿易と外交の都市、那覇について、「浮島」であった古琉球那覇の地域的状況を復原し、さらに近世那覇の都市景観について検討すること、古琉球の波上権現護国寺の創建・再興について同時代史料によって新見解を提示し、波上権現と護国寺が琉球王国と深い関係を築くに至った理由の一端を明らかにすることを通じて、古琉球那覇の都市的な特質、また首里との関係を把握した。 2. 東アジア中世の首都-共通性と固有性 首都のみならず中世都市の空間構造を分析する視点について作業仮説の構築をさらに進めた。これにより空間構造の基盤をなす要素・要因についてとくに都市思想・環境理念、自然との関係に配慮し、比較検討を行った。 3. 西洋中世における首都の変容と空間構造 スペイン中世の首都などについて実地調査を行い、西洋とイスラムの文化が混在するマドリッドやセルビア、バルセロナなどにも日本の<境内>と<町>などと同様の空間現象が存在することを確認した。 4. 世界のなかの東アジア中世の首都-普遍性と多様性 首都を補完する東アジアの交易港市には、媽祖信仰と媽祖廟また観音信仰が不可欠であるが、ヨーロッパにもそれらとよく似た航海守護の信仰があり、例えばバルセロナの都市的発展過程において「海の聖母マリア」を祀る「海の教会」サンタ・マリア・デル・マル教会が重要な位置を占めることを見いだした。
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