研究課題/領域番号 |
21360302
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研究機関 | 花園大学 |
研究代表者 |
高橋 康夫 花園大学, 文学部, 教授 (60026284)
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キーワード | 東アジア / 首都 / 空間構造 / まちづくり / 琉球 |
研究概要 |
1.東アジア中世における首都の変容と空間構造 首都平安京から中世京都、そしてその近世から近代への変容過程のなかで、平安京・京都の周縁地域ないし後背地(ヒンターランド)を具体的に「景勝ヒンターランド」として位置づけるとともに、「中心市街地」の特質、さらに中心市街地「京中」・「洛中」とヒンターランド「京中」・「洛外」の関係を検討した。また首里と首都機能を分担した貿易と外交の都市、那覇について、古琉球期における港町那覇の造営の実態を検討することを通じて、首都首里との関係を把握することに努め、那覇港経営の政治・経済的・国際的な意味について新たな理解を提示できるにいたった。 2.東アジア中世の首都-共通性と固有性 首都のみならず中世都市の空間構造を分析する視点について作業仮説の構築をさらに進めた。これにより空間構造の基盤をなす要素・要因についてとくに都市思想・環境理念、自然、<中心>と<周縁>との関係に配慮し、比較検討を行った。 3.西洋中世における首都の変容と空間構造 チェコ中世の首都プラハについて実地調査を行い、プラハ城とその城下、新市街について日本の<境内>と<町>などと同様の空間現象が存在することを確認し、またボヘミアの「首都」であったヴィシェフラトとプラハとの関係から、古琉球期の旧都・浦添を理解する示唆を得た。ほとんど言及されることのない首里への首都移転後の浦添について今後検討する必要性を認識した。 4.世界のなかの東アジア中世の首都-普遍性と多様性 首都を補完する東アジアの交易港市に不可欠な宗教的要素として、媽祖(天妃・天后)信仰の廟、また観音信仰や文殊信仰の堂がある。ヨーロッパ各地の港町における「海の聖母マリア」を祀る「海の教会」や中国の観音信仰の普陀山と寧波などの事例を増やすとともに、古琉球期の那覇における天妃宮と都市形成の関係を検討した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
23年度の研究実施の過程で、当初の計画にない首都の後背地に着目したことは予期しない深みをもたらした。通常、後背地とは経済的・社会的機能が及ぶ地域を意味するのであるが、平安京の後背地「京外」の場合はそれらに加えて政治的・文化的・宗教的影響が及ぶ。さらにヒンターランド自体が首都に逆方向の影響をも及ぼすことがある。平安京とヒンターランドが相互依存、相互補完の関係にあることの発見は新たな展望を開くものであった。
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今後の研究の推進方策 |
24年度の研究実施計画に基づき着実に進めるが、首都の空間構造を内的のみならず、首都圏とも呼ぶべき周縁地域、あるいはヒンターランドに拡大して捉える必要があることを念頭に置いて、海外実地調査や資料収集にあたりたい。研究計画の変更あるいは研究を遂行する上での問題点などはない。
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