1.東アジア中世における首都の変容と空間構造/世界のなかの東アジア中世の首都 明と朝鮮に対比して日本と琉球の首都には城壁の有無などのほか大きな特徴がある。日本中世の都市形成について検討するなかで、京都そして首里の空間構造の特質を把握し、京都については中世から近世への歴史過程を位置づけ、首里については固有の特性を示した。 都市壁をもたない琉球の首里と日本の京都においては自然と深く関わる固有の都市空間が形成されたこと、非囲郭・拠点散在・風景都市(Landscape city)としての様相・特質を指摘することができた。囲郭都市(Walled city)としてのヨーロッパ中世都市・東アジア古代都城の〈普遍性/一般性/画一性〉の相対化が必要とされる今、京都や首里・那覇の議論を通してそれらに対置しうる都市性、その〈固有性/特殊性/多様性〉を提示することも視界に入ってきた。 2.東アジア・西洋中世の首都――共通性と固有性 京都の固有性を抽出するために、ともに統一を志向した軍事権門――足利義満と豊臣秀吉、中国・明から冊封された二人の「日本国王」――の「王都」について比較検討を行い、近世城下町化とされる秀吉の京都改造事業と対比して、義満の中世的特質をとらえるとともに秀吉の近世都市化も見直した。 ネーデルラントの行政的中心で城塞と市場を起源とするブリュッセルと、早くから首都としてついで商業都市として発展したリヨンについて実地調査を行い、日本の〈境内〉と〈町〉などと同様の空間現象が存在することを確認し、またリヨンにはトラブールと呼ばれる通路が建物群のなかを通り抜けていること、日本の辻子などとよく似た都市的現象を認めた。
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