チタン酸ストロンチウム(以下STO)の小傾角粒界における粒界転位配列の制御、解析を行った。傾角が2~8゜の範囲内において粒界には主に刃状転位が配列することが分かった。その転位間隔は傾角に依存して変化し、傾角が増大するとともに転位密度が増大することが明らかとなった。転位コアへのドーパント添加に先立ち、転位コアおよびその近傍における陽イオン比変化に関する基礎的データーについて調べた。まず、高温下での熱処理により、転位近傍がSr過剰となる領域と化学量論比から大きくは変化しない領域とに分類できることが見出された。さらに、この陽イオン比の変化に伴いSr過剰領域では粒界の一部にワァセット化が認められることを突き止めた。この陽イオン比変化は熱処理中に生じる陽イオン空孔の形成挙動と密接に関連すること、また、それら空孔形成エネルギーの差が不定比性をもたらすことを理論計算により明らかにした。このような不定性の発現は、ドーパントの種類に依存する可能性があることについても突き止めた。一方、転位コアへのドーパント添加については、基礎実験で明らかとなった陽イオン比変化をもとにTiサイト置換型のイオンを選択する必要がある。その候補としてLaイオンを用いることとし、粒界上へLa水溶液を塗布後高温下で熱処理を行ったところ転位コア中へのLaの拡散が認められた。この拡散したLaは転位コア部にのみ存在するわけではなくその近傍にも分布していることが明らかとなった。
|