本年度は昨年度に得られた基礎データをもとにチタン酸ストロンチウム結晶中に転位を高密度に導入する熱処理条件ならびに塑性変形条件を検討した。さらに、結晶中に導入された転位の原子構造解析を行った。その結果、ある種の転位は転位コアが分解すること、そのバーガースベクトルは1/2a[001](aはチタン酸ストロンチム格子の格子定数)であることなどを確認した。一方、このような転位導入について小傾角粒界を用いた双結晶の作成についても行った。まずその接合条件を検討した。試料には機械研磨の後にメカノケミカル研磨処理を行ったチタン酸ストロンチウム[001]単結晶基板を用いた。接合面を洗浄した後に、互いに重ね合わせ大気中にて高温熱処理を行った。その結果、重ね合わせた単結晶基板が完全に接合する温度範囲は、1100~1300℃であることを確認した。接合後の断面観察(クロスセクション)を主に透過型電子顕微鏡を用いて行ったところ粒界部は原子レベルで接合されており、アモルファス層や第二層などの析出物などについては確認されなかったことから接合条件については適切であるこもと判断できる。一方、その粒界面に対して垂直方向(プランビュー)から観察を行ったととろ粒界部には粒界転位網が形成されていることを確認した。これらの転位は、完全転位で構成されており、全て螺旋転位であることがわかった。さらに、互いの回転角度を僅かに変化させた試料を種々作成し、その転位構造の変化について調べたところ、回転角度が大きくなるに従い転位網の転位間距離が減少することくを確認した。これらの知見をもとに、転位中への原子拡散を行っていく予定である。
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