研究概要 |
金属の融点は、純金属および合金のいずれにおいても、粒子サイズの減少に伴い低下することが以前より知られている。しかし、融点の粒子サイズ依存性における合金化の効果は系統的には調べられてこなかった。そこで本年度は、Bi-Sn,In-SnおよびPb-Sn合金ナノ粒子を取り上げて、共晶温度の粒子サイズ依存性を高分解能電子顕微鏡内加熱その場観察法によって実験的に調べ、それらの合金を構成する元素からなる純金属ナノ粒子のデータと比較することにより、粒子サイズ依存性における合金化の効果を明らかにした。また、得られた実験結果を説明し得る熱力学的なモデルを構築した。 実験は、研究代表者らが独自に開発した双源蒸着装置付試料ホルダーを用いて行った。カーボン基板を予め所定の温度に保持し、この上に第一成分を蒸着し純金属ナノ粒子を作製した。このナノ粒子は、さらに第二成分を蒸着してゆく過程で融解した。融解時の粒子サイズから、合金ナノ粒子の共晶温度のサイズ依存性を得た。その結果、合金ナノ粒子の共晶温度は、三種類のいずれの合金においても、合金の構成元素からなる純金属ナノ粒子の融点より低く、かつ強い粒子サイズ依存性を示した。熱力学的な考察では、Jesserらによる純金属に関するモデルを拡張した。その結果、(a)粒子半径の逆数に対する共晶温度の関係には純金属の場合と同様に線形関係が成立すること、および(b)この比例係数の絶対値は合金の場合には増大すること、が導かれた。この結果は、実験結果を矛盾無く説明するものであった。 このように、本研究では、実験と理論の両面から、ナノ粒子の融解温度のサイズ依存性に対する合金化効果を定量的に明らかにすることに成功した。
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