研究概要 |
本研究の目的は、ナノ構造において発現する特異な構造・量子物性を利用・発展させて、2成分系の0次元のナノクラスター・ナノ粒子から1次元のナノロッド・ワイヤ等の低次元ナノ構造体のサイズをそろえて創製する手法を開拓するとともに、異なる種類のナノ構造体をビルディングブロックとして自己組織化させて配列させることによりそれらの相互作用から発現する新規な量子物性を探索することにある。 本年度は、SiおよびAuナノ粒子の表面状態を制御してサイズをそろえて作製し、光学特性および電子構造に関して以下の成果を得た。 (1) Siナノ粒子は量子サイズ効果や表面効果に起因して発光するが、その定量的な研究は少ない。有機分子によって表面修飾した安定な表面を持ちサイズ分散の小さいSiナノ粒子を調製し、硬X線光電子分光測定および発光測定によってその発光メカニズムついて調べた結果、観測される紫外領域の発光は、電子-正孔対の再結合過程によるものであること、また、Siナノ粒子のサイズが小さくなると量子閉じ込め効果によりフォノンの関与しない擬似直接遷移による電子-正孔対の再結合過程の割合が増加することを明らかにした。 (2) 金属ナノ粒子が持つ特異な物理的・化学的性質はデバイス、バイオセンサーや触媒などへの応用が期待されており、こうした特性に電子構造が大きく関連する。表面修飾Auナノ粒子の電子構造とその温度依存性について,放射光を用いた光電子分光測定によって調べ、Auナノ粒子がサイズの減少とともに金属-絶縁体転移を起こすことを明らかにした。
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