ナノ構造において発現する特異な構造・量子物性の解明を目的として、2成分系の0次元のナノクラスター・ナノ粒子から1次元のナノロッド・ワイヤ等の低次元ナノ構造体のサイズをそろえて創製する手法を開拓するとともに、異なる種類のナノ構造体をビルディングブロックとして自己組織化させて配列させることによりそれらの相互作用から発現する新規な物性を探索した。本年度は、Pdナノ粒子およびAuナノロッドを、それぞれサイズおよびアスペクト比を制御して作製し、以下の結果を得た。 Pdナノ粒子については、バルクにおいて安定なfcc構造を、電子照射効果を利用してhcp構造やアモルファスに構造相転移させる手法について検討した。その結果、10nm以下のサイズのナノ粒子においては、MeV電子照射により低温で点欠陥を導入・凍結すると、原子の平均二乗変位が増大し、配位の多様性に起因したアモルファスに類似した結晶構造の不規則化が誘起される。また、10nm以上の粒子においては積層欠陥の自己組織化によりhcp構造が生成することが示された。 一方、シード・メディエイティッド法によって作製したAuナノロッドはアスペクト比を正確に変化させることによって可視~近赤外領域までの広い波長領域における光学応答を示した。放射光を用いた光電子分光測定によって、Auナノロッド表面に原子2層のAg薄膜層が存在し、その周囲をCTAB分子によって表面修飾された構造であることを示した。Agイオン濃度によってアスペクト比が精密に制御できる事実と、Auナノロッド表面の原子2層のAg薄膜層の存在が、アスペクト比の分散を小さくする原因であることを明らかにした。
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