研究課題/領域番号 |
21360311
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研究機関 | 大阪府立大学 |
研究代表者 |
沼倉 宏 大阪府立大学, 工学研究科, 教授 (40189353)
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研究分担者 |
千星 聡 大阪府立大学, 工学研究科, 助教 (00364026)
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キーワード | 格子欠陥 / 回復・再結晶 / 結晶粒微細化 / 力学特性 / 結晶塑性 / 弾性 / 内部摩擦 / メカニカル・スペクトロスコピー |
研究概要 |
鉄の超強加工に関しては極低炭素鋼(IF鋼)を用いて加工度・組織・強度の関係を調べた先行研究があるが、本研究では高純度鉄に炭素あるいは窒素を添加して添加元素の影響を調べる。初年度である今年度はまず純度99.99%(4N)の鉄の板状試料を繰り返し接合圧延(ARB)法により超強加工することを試み、相当ひずみ5.6まで冷間加工することに成功した。組織は加工度とともに微細化し、平均結晶粒径はひずみ5.6ではおよそ200nmまで小さくなった。硬度は粒径に対応して上昇し、降伏強度と引張強度も加工前の数倍に上昇した。電気抵抗(主に転位密度を反映)は加工度にほぼ比例して上昇した。次に、純度4Nの鉄の素材に湿水素焼鈍を施して、不純物として20mol ppmほど含まれている炭素と窒素の濃度を1molppm未満に低減し、同じ方法で超強加工を行った。強度と電気抵抗は4N鉄よりもやや低く、固溶炭素・窒素の影響が明らかになった。水素焼鈍未処理材、処理材の両方について、等温焼鈍および等時焼鈍における欠陥の回復と再結晶挙動を調べた。硬度・電気抵抗・動的弾性率の測定によって、超強加工により導入された欠陥(主として転位と粒界)が再配列・消滅してゆく過程を定量的に明らかにした。 ニッケルについては、純度99.99%の素材を用いて同じくARB法で超強加工を試み、相当ひずみ5.6まで加工することに成功した。組織は200nm程度まで微細化し、強度と電気抵抗も純鉄と同様に上昇した。 高純度アルミニウムでは室温加工において回復が起こるため微細化には限界があるが(相当ひずみが2~3で平均粒径500nm程度)、高融点遷移金属である鉄とニッケルではARB法による冷間加工で200nm程度まで結晶粒を小さくできることがわかった。また、その微細組織と高密度の欠陥が熱活性化過程により回復・消滅することを定量的に明らかにすることができた。
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