研究概要 |
LiBH_4へのハロゲン化アルカリ(LiCl,LiBr,LiI)の固溶によって、結晶相の転移温度を低温化できることが明らかになった(MaekawaらJ.Am.Chem.Soc.,131,894(2009)特願2008-125862)。現在までに、ハロゲン化物の水素化物への固溶、ならびに超イオン伝導相の室温以下までの安定化が可能であることが示された。平成21年度内は、室温以下でのリチウム超イオン伝導相の安定化と、その電気化学的評価を行った。LiBH_4を電解質として用いた全固体電池を作製し、その充放電特性を評価した。開回路電位はLi負極で4V、In負極で3.3V程度の理論起電圧と一致するが、充放電容量は理論値の数%と非常に低く、また充放電サイクル特性に難がある結果が得られた。から、専ら正極の電極-電解質界面において化学反応などの問題が生じLiBH_4とLi金属との間にはほぼ分極性の成分が見られないことから、専ら正極の電極-電解質界面において化学反応などの問題が生じている可能性が示唆される。この問題点を解決するために、電解質、電極材料、並びに電池作製時に用いる導電助剤について、容量低下を引き起こしている原因物質、あるいは反応を特定するがめ、実電池セルでの充放電測定、正極、負極のCV測定を系統的に行った。 一方、LiBH_4における超イオン伝導性について、この結晶をLi陽イオンと分子性BH_4^-陰イオンから形成されるイオン性結晶と捉え、特異なイオン伝導性を、結晶内の空サイトの存在、特に高温相の2次元的伝導パスの生成と、BH_4^-イオンの協同的な回転運動との関連から理解することを目指した。これについては、^1H NMRにおいて、-100℃以下の定温においてもC_3軸を中心としたBH_4^-イオンの回転運動が凍結されないこと、また、超イオン伝導相においてBH_4^-イオンの回転の自由度に変化が観測されることが予備的な実験により明らかになった。NMR分光法、Spring-8による放射光測定を用い、その伝導機構を分子回転の自由度とその運動速度に着目し、解析した。
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