研究概要 |
最終年度であり、VUV励起ホスト発光を生じる結晶の、ホスト発光中心STE(自己束縛励起子)の解析、STE-アクセプタへのエネルギー移動のダイナミクスとエネルギー移動機構及び温度依存を明らかにし、VUV励起のホスト増感による蛍光体特性につい以下の成果を得た。 1.ホスト発光中心の解析: LaSc 3(BO 3) 4(LSB)において真空紫外(VUV)及びX線励起で同様なブロード発光をすることを見出した。室温から極低温までの温度依存から発光スペクトルは2つのバンドから成ることが確認され、時間分解スペクトルより,それらはスピン許容の一重項状態とスピン禁制の三重項状態のSTEと帰属された。X線照射後の熱ルミネッセンスにより,2つのトラップ中心が確認され、ESR測定より,求めたg値から2つのトラップ中心がホールトラップと電子トラップであると帰属された。これらはBO 3^<3->分子基内の遷移であることからそれぞれo^-およびB^<2+>欠陥であると考えられる。 2.STE-希土類アクセプタ間のエネルギー移動およびダイナミクスの解析と温度依存: Gd^<3+>添加LSB((LSB:Gd^<3+>)、LSP(LSP:Gd^<3+>)及びTb^<3+>添加LSB(LSB:Tb^<3+>のVUV励起発光スペクトトル、励起スペクトル強度のGd3+及びTb3+濃度依存から、ホスト発光中心(STE)からGd^<3+>およびTb^<3+>へのエネルギー移動が生じることを見出した。時間分解スペクトルからエネルギー移動のダイナミクスを明らかにし、LaSc 3(BO 3) 4:Gd^<3+>(LSB:Gd^<3+>)及びLaSc 3(BO 3) 4:Tb^<3+>(LSB:Tb^<3+>)の時間分解発光スペクトルからSTE発光の減衰挙動を求め、Undoped及びGd^<3+>添加LSB:Gd^<3+>およびTb^<3+>添加LSB:Tb^<3+>の緑色発光の減衰曲線は、早い成分と遅い成分の2成分からなることが分かり、STEの発光減衰は,Gd^<3+>あるいはTb^<3+>を添加するとundopedよりも減衰寿命が短くなるという結果を得、STEからGd^<3+>あるいはTb^<3+>へのエネルギー移動を起こすことを実証した。また、Gd^<3+>およびTb^<3+>添加のLSBのSTEの減衰寿命の変化から、エネルギー移動速度を実験的に求めた。双極子-双極子相互作用を仮定してモデルで概算したエネルギー移動速度の計算値と実測値がほぼ同じオーダーで一致することを見出し、STEから希土類イオン(Gd^<3+>,Tb^<3+>)へのエネルギー移動機構は双極子-双極子相互作用が支配的であることを明らかにした。 3.エネルギー移動の温度依存:エネルギー移動あ温度依存を調べ,Gd^<3+>添加に伴う温度低下に伴いSTEの発光強度に対するGd^<3+>の発光強度比が減少することから,STEからGd^<3+>へのエネルギー移動にフォノンアシストの寄与があることを明らかにした。以上21-23年度で得た結果として、VUV励起で新規な青、緑、赤色蛍光体を得ることができた。
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