研究概要 |
Pb(Zr,Ti)O_3は大きな電気的エネルギーと機械的エネルギーの変換特性(圧電特性)を有し、発見から50年以上たった現在でも、インクジェットプリンタのヘッド等に幅広く使用されている。しかしPb(Zr,Ti)O_3[以後PZT]はこれまで単結晶の作製にほとんど成功しておらず、自発分極値等の基礎物性やその結晶方位依存性は明らかにされていないのが現実である。本申請は、単結晶厚膜の作製に世界で初めて成功した申請者の成果を基に、以下の2項目を行うことを目的としている。 1) さらに高品質のPZT単結晶を作成する。 2) 得られたPZT単結晶を用いて基礎物性を明らかにする。 高品質な結晶作製が可能なMOCVD法を用いて研究を行い、上記1)2)に対し、以下の結果を得た。 1) 高品質のPZTを作製するため、種々の格子定数をもった電極層の検討を行った。 (La_<0.7>Sr_<0.93>)SnO_3[LSSO]膜は、通常用いているSrRuO_3より大きな格子定数を有し、透明であるという特長を有するが、この上に作製したPZTはエピタキシャル成長するものの、良好な強誘電性を示さなかった。また、同じく大きな格子定数を有する(Ba_<0.25>Sr_<0.75>)RuO_3膜は、SrRuO_3膜と同じ条件で作製すると結晶性が劣り、さらなる条件の最適化が必要であることが明らかになった。 2) バッファー層を工夫することによって、CaF_2基板上に(001),(101)および(111)に単一配向した正方晶の膜の作製に成功した。また、得られた膜の強誘電性は、電界印加方向からの分極軸の角度差によって説明可能であった。
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