密度が同等のルチルセラミックスを作製し、表面を鏡面研磨したのち、アニールを行うことで歪みを取り除き、表面での紫外線照射による摩擦力の変化を調査した。その結果、セラミックスを形成する個々の粒子で紫外線照射による摩擦力の変化の様子が異なり、摩擦力が短時間に変化するものと、なかなか変化しないものがあることが判った。また長時間光照射を行うと、摩擦力が極大値を示した後に下がってくる傾向があることも判った。光照射による摩擦力の変化は表面の親水化と関係付けられることが過去の研究から明らかになっているが、粒子毎の変化や、摩擦力が極大値を示した後に下がってくる傾向は、これまで報告されていない。実験に用いたルチルセラミックスの微構造を反映した特徴である可能性があり、現在電子後方散乱回折を用いて、個々の粒子の指数付けを行い、摩擦力変化の挙動と結晶面方位との関係について解析を進めている。また原子間力顕微鏡にファンクションジェネレータを取り付け、動的摩擦力測定の高さ依存性から水膜の厚さと粘性を調査する実験を開始し、実験条件は概ね把握できつつある。 さらに親水表面の接触角の液滴径依存性から、微小液体では線張力の効果がみられること、通常の計測に用いる直径1-2mm程度の液滴では静水圧の効果が線張力に勝ること、表面エネルギーの変化により親水から撥水に移行するのに伴い、線張力の符号が逆転していくことなどが明らかになった。これらを通じて、液滴の大きさと、固体表面との相対的な大小関係が濡れの計測に与える影響について基礎的な知見が得られた。
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