市販のルチル粉末を一軸加圧成形し、1100℃、2時間で常圧焼結して緻密な焼結体を作製した。得られた焼結体に対し、鏡面研磨、洗浄、熱エッチングを行い、測定試料とした。紫外光照射に伴うルチル多結晶体表面の摩擦力変化をFFMにて各種の雰囲気下(大気、ドライ窒素、ドライエア中)で評価した。また、同条件での紫外光照射による接触角の変化を測定した。 ルチル多結晶体表面に大気中で紫外線を照射したところ、はじめ表面摩擦力の増加が見られ、その後減少に転じた。この間、接触角は低下した。さらに紫外線を照射し、水接触角が低下して飽和値に達したあたりから摩擦力が微増していく様子が確認された。摩擦力の増加は表面吸着有機物の酸化分解によるものであるという仮定のもと、各結晶粒の摩擦力の変化から表面エネルギーの変化を概算し、各粒子が各照射時間で示す接触角と紫外線照射時間との関係をプロットしたところ、摩擦力の増加領域では、実測値と概ね一致し、親水化の初期は吸着有機物の酸化分解によるものであることがわかった。このことはドライエア雰囲気下の紫外線照射で摩擦力が増加したが、減少しなかったことからも支持された。また、ドライエア雰囲気下で紫外線を照射し、高度に清浄化した表面に、水蒸気を導入したところ、摩擦力が減少し、さらに紫外線を照射したところ、摩擦力が増加した。このことから高度な親水化には水分子の光吸着が関与していることが明らかになり、単結晶(100)面を用いたフォースカーブ測定から、その表面には2-3nm程度の水膜が生成していることが示唆された。
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