研究概要 |
本研究の目的は,高エネルギーナノ電子プローブによって試料各点から得られる二種類以上かつ多数のスペクトルに対して統計学的処理による情報抽出を行い,ヘテロ構造を持つ機能材料の光学物性を1ナノメートルの空間分解能で可視化する技術を確立し,実用光学材料解析に応用することである. (1)CL集光ミラー・レンズー体型試料ホルダーの設計:JEM200CX透過電子顕微鏡用に開発したCL集光試料ホルダーの欠点は,(i)平面ミラーを使っているために集光効率が悪いこと,(ii)集光立体角を稼ぐために光ファイバーが近接しているので,試料からの二次電子によってファイバー自体が発光し,試料からの発光を覆い隠す場合があることである.平面ミラーをこの楕円ミラーで置き換え,さらにこのミラーで平行化した発光信号を離れた位置に置いたレンズで集光し光ファイバーでPMA分光器まで伝達するシステ去をJEM2100-S/TEM用の片持ち型一軸傾斜ホルダーとして作製した。本ホルダーの性能確認のために,発光賦活元素Eu^<3+>を添加したCa_2SnO_4セラミックスの^5D_0-^7F_2電気双極子遷移を測定した.統計的ALCHEMI法を適用して,まずEu^<3+>がCaサイトとSnサイトを等量置換していることを明らかにした後,電子チャネリング効果を利用したサイト選択的測定をCLに応用し,双極子モーメントの大きい非対称なCaサイトからの発光が80%以上を占めることを示した. (2)スペクトラムイメージの多変量解析による成分分離と可視化:ターゲットとしている白色発光Si-O-Cナノ構造材料において収差補正器を搭載した走査透過型電子顕微鏡(STEM)及び電子エネルギー損失分光(EELS)によるスペクトラムイメージを取得、多変量解析によって、ナノレベルの成分分離を行った。これによってグラファイト化したクラスター、Si-C界面構造の分布を画像化し、さらに酸化シリコン部のシリコン原子が還元されていることが確認された。多元スペクトラムイメージ解析については,実際には多種類のスペクトルが同時に測定されても,実質的には二元解析に帰着できることが判り,現状までの解析プログラムで対応できた.
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