研究概要 |
平成22年度は新規層状炭化物ホモロガスシリーズの合成と結晶構造解析を研究目的としている。この目的の意義は、ゼーベック係数(α)が大きく,導電率(σ)が高く,さらに熱伝導率(κ)の低い高性能な熱電変換材料の設計に密接に関係することにある。本研究計画では比較的高温(800℃程度)で動作する材料を対象とすることから、熱力学的に安定な自然超格子を形成する層状化合物(MC)_lT_<4m+3n>C_<3m+2n>(M=Zr,Y,Hf,T=Al,Si,Ge)の合成を行った。多様な層状炭化物の熱電特性を解析することで、「導電率の比較的高いMC層」よりも、「導電率の比較的低いT_<4m+3n>C_<3m+2n>層」がより重要であるとの結論に達し、(Al,Si)_<4l+m>(O,C,N)_<3l+m>化学組成の新規化合物探索をおこなった。この化合物は、[(Al,Si)_4(O,C,N)_4]組成の層と[(Al,Si)(O,C,N)_2]組成の層が積層する特徴を有している。今回、(l,m)=(2,1)、(1,1)、(1,2)、(1,3)、(1,4)で表される新規化合物の合成に成功した。今後、これらの化合物を組み合わせて結晶化することで、さらに多様な新規ホモロガス相を創製することが期待できる。発見した層状化合物の結晶構造解析にはX線粉末回折法と透過型電子顕微鏡法を用いた。回折データからは不規則構造として記述できた構造は、顕微鏡観察によって微細な分域構造から成ることが確かめられた。これら互いに相補的な評価手法を用いることで、不規則構造を有する結晶構造を粉末回折法で求める方法論の確立に貢献することができた。
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