研究概要 |
本研究では、アルカリホウケイ酸系を中心とした分相ガラスに、発光中心としてCu^+イオンをCu^+-Cu^+クラスターイオンの形で導入し、蛍光ガラス相と保護ガラス相、および光散乱の中心となるそれらの界面を、ナノスケールで複合化させることにより、近紫外光により暖色系の白色発光し、かつ長期安定性・高耐熱性を持つ高輝度発光材料を実現することを目的としている。本年度は、ガラス組成の光吸収・発光に及ぼす影響を調査し、発光機構の解明のための指針を得ることを主な研究目標とした。 ガラス組成を、分相領域内と考えられるR_2O-B_2O_3-SiO_2系(R=K,Na,Li)の系6組成とし、発光中心となるCu2O、還元剤であるSnOを所定量添加して、溶融・急冷法により試料を作製した。急冷試料の残留歪み、紫外-可視吸収スペクトル、蛍光・励起スペクトル測定(常温および低温測定)を行った。作製した試料は白色光下でいずれも無色透明で、かつCu^<2+>とCuコロイドによる明確な吸収は認められなかった。各試料について、近紫外光(365nm)励起による蛍光・最大発光波長での励起スペクトルを測定した結果、近紫外光励起ではCu^+による青色発光、Cu^+-Cu^+クラスタによる黄橙色発光が混合した400nm~800nmの可視光全域にわたる幅広い暖色系の白色発光を示すことが分かった。発光強度はアルカリ金属種およびガラス組成によって変化した。またその挙動の中で、アルカリ金属種による変化が顕著な理由として、クラスタを形成していないCu^+イオンの配位環境が変化している可能性が示唆された。Cu^+イオン、Cu^+-Cu^+クラスタによる発光とガラス組成の関係については、今後引き続きに調査する必要があることがわかった。
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