研究概要 |
平成21度においては、固体アルカリ形燃料電池を実用化するために必要な電気伝導度に近い値を示す試料の作製を目指して、出発原料の選択と作製条件の検討を行った。平成22年度には、電気伝導度を増大させると同時に、適度な強度と柔軟性を備えた試料を作製し、その分析評価を行うことに主として取り組んだ。マトリックスの骨格を形成するポリマーの主鎖1ユニット当たりのイオン伝導性に寄与する官能基数の増加に有効な出発物質の選択を行った。側鎖エポキシ変性シリコンオイルにトリエチルアミンと水を加え、アセトン溶媒中で撹伴した。次に、架橋剤として両末端アミノ変性シリコンオイルを加え固化した。試料のイオン伝導性は、蒸留水に12時間浸漬後、カーボンペーパーを電極とした交流インピーダンス測定により評価した。 作製した試料のイオン交換容量は0.86mmol/gであった。電気伝導度は、40~80℃において、相対湿度60,80%の条件下で測定した。電気伝導度は、80℃,60%のときに最大値を示し、1.0×10-5S/cmであった。フッ素樹脂系のイオン交換膜と条件下で比較して、2桁近く低い理由は、イオン交換容量が半分程度と低く、また導電パスとなるクラスター構造が連続して形成されていないためであると考えられる。今後は、イオン交換容量の増大とともに、試料の調整条件を制御して、導電パスの連続的なネットワークを形成すること、および得られた試料の膜電極接合体を作製し、燃料電池特性の評価を行う。なお、現状では、電池の出力が小さいが、膜電極接合体にすることにより、電極と電解質の界面抵抗を減少させることが示唆されており、出力向上に繋がるものと考えている。
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