研究概要 |
私たちは、これまでに分子内に無機・有機ハイブリッド局所構造を有するシラン系ポリマーをマトリックスに用いて、ポリマーの局所構造の修飾・静電的相互作用を利用した固体酸の導入と固定化、化学結合を介したハイブリッド化による耐久性の向上を行い、現状で実用に供されているフッ素樹脂系イオン交換膜に近いプロトン電導度が得られること、さらにそれを用いて膜電極接合体を作製し、燃料電池として作動することを確認した。本研究では、水酸化物イオンを供与できる官能基を有するアミノシラン系ポリマーをマトリックスとして、高い水酸化物イオン導電性を有する無機・有機ハイブリッド電解質膜を作製し、キャラクタリゼーションの後、燃料電池としての特性を評価する。既にアミノシラン系ポリマーを用いた実験により、アミノエチル・アミノプロピル・メチル・ジメトキシシランが、10^<-4>S/cm程度の高い水酸化物イオン導電性を有することを報告した。当該アルカリ電解質膜は、水酸化物イオン電導性は、エポキシ基-アミノ基結合部位の1,2級アミノ基が水を解離させることで発現している。そこで、アミノシランと末端エポキシ変性シリコンオイルで膜を作製した。ところが、三員環トリシロキサンや四員環テトラシロキサンが生成して膜は脆ぐ、これ以上の水酸化物イオン導電性の増大は、膜強度を維持しながら達成することは困難と判断した。そこで、従来膜より水酸化物イオンの立体的な移動の容易さを考慮した上で、側鎖エポキシ変性シリコンオイルを主剤として、導電率に寄与する第四級アンモニウムを側鎖上に生成させ、膜化することで導電率の向上を図った。その結果、溶媒をアセトン或いはイソプロパノールとした試料において、製膜が可能であり、その導電率は、10^<-5>S/cmではあるが、燃料電池特性が測定可能であることが分かった。開回路電圧は,0.3~0.7Vの間の値を示した。今後、膜生成の最適化により、電解質、膜及び界面の導電率が増大できると、アルカリ形燃料電池の新しい分野を開拓できると考える。
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