本研究は、導電性材料であるナノカーボンを充填剤(フィラー)として高分子マトリックス中に分散させた導電性高分子複合材料におけるフィラー分散構造と電気的性質との関係を明らかにし、新規導電材料の創製へと展開するものである。特に、この複合系の構造と物性を議論する上で非常に重要なダイナミックパーコレーション現象について理論と実験の両側面から詳細に検討することを目的としている。本年度は、導電性フィラーとして、気相成長炭素繊維(VGCF)、カーボンブラック(CB)などを使用し、これらを様々な充填量でポリメタクリル酸メチル(PMMA)に充填し、導電性高分子複合材料を作製した。これらの複合材料について、室温での直流体積抵抗率や走査型電子顕微鏡(SEM)によるフィラー分散状態の観察など、基礎的物性の測定を行った。また、様々なフィラー充填量を有するこれらの複合系について、高温における電気的性質の経時変化をリアルタイムで測定(In-situ測定)し、ダイナミックパーコレーション挙動を観測した。考案した理論モデルに基づき、これらのデータを解析し、高温における導電性フィラーネットワークの形成過程について考察した。さらに、ダイナミックパーコレーション現象を応用した材料創製として、少量のフィラー充填量で導電性を有し、かつ微細な発泡構造を有する、導電性マイクロセルラーコンポジットの作製を行い、そのフィラーネットワーク構造と発泡挙動及び電気的性質との関係について調べた。
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