ナノテクノロジーの本質はナノ粒子間、ナノ粒子/マトリックスポリマー間、ポリマー間の相互作用にある。もちろん、ナノテクノロジー材料は成形加工を経て製品化される。成形加工では必然的に大変形、高速変形条件が課せられ、非線形性が現れる。したがって、非線形条件をも含む幅広い条件下でのさまざまな相互作用を明らかにする必要がある。すなわち、ナノテクノロジーは単にナノサイズ粒子を分散させるだけでなく、ナノ粒子とマトリックスポリマーの間に強い相互作用がなければならない。もちろん、ナノ粒子は活性であるので、粒子間にも相互作用が生じる。したがって、必然的に階層的構造が形成されるが、それらの構造は大変形あるいは高速変形下では構造破壊を伴うので、構造非線形性が現れる。ナノ材料の研究において、構造非線形性の理解が重要な理由はここにある。自作した複合多軸粘弾性試験装置とPd-Pメッキを施したステンレス製円板治具にカーボンブラック(CB)充填SBRを分子加硫接着させた被測定試料系を用い、大振幅せん断振動変形下における微分動的弾性率と体積抵抗率の同時測定、ならびに大せん断変形ならびに大伸長変形での同試料の温度・時間換算則における弾性率移動因子の温度依存性を詳細に検討することにより、CB充填架橋ゴムのフィラー補強はCBフィラーを結びつけるブリッジ高分子鎖の延伸効果に由来することを世界で初めて明らかにした。さらに、CB充填架橋ゴムの非線形粘弾性が高分子網目、ブリッジ高分子網目、接触フィラー網目より構成される3網目モデルにより説明できることを明らかにした。ここで得られた成果はナノ粒子分散系材料力学物性の新しい評価・予測法を提供するとともに、ブリッジ高分子網目という新しいフィラー補強設計指針を与えるものである。
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