研究概要 |
リビングアニオン重合にて分子量分布を制御したPMMA-PnBA-PMMAトリブロック共重合体(BCP)とエポキシ樹脂(DGEBA,エポキシ当量189g/eq),phenol novolak(PN)硬化系)とのポリマーアロイについて、BCP分子量およびPnBA/PMMAブロックセグメント組成比を系統的に変更することで、直径または幅が約20~40nmの球状、ランダムシリンダー状、湾曲ラメラ状の相構造を有する硬化樹脂を選択的に作製することに成功した。これらナノアロイ硬化樹脂3種の中ではランダムシリンダー状ナノ相構造を形成した場合にBCP添加量10wt%における靭性値が最も高くなり、エネルギー単位(破壊歪みエネルギー解放率)で表現すれば未改質エポキシ樹脂の20倍以上に至ることがわかった。一方、硬化樹脂の弾性率は、球状もしくはランダムシリンダー状ナノ相構造のものが相対的に高く、逆に湾曲ラメラ状相構造の場合はBCPの少量添加で弾性率を効果的に低減させることがわかった。つまり、ナノ相構造形態の作りわけにより硬化樹脂の破壊靱性や弾性率を制御できる。破壊靭性向上は、負荷時に予亀裂先端に働く3軸応力によってゴム状のナノPnBA相が空洞化して応力状態変化が生まれ、周囲のエポキシマトリックスの塑性変形を効果的に誘発する機構で得られた。また、湾曲ラメラ状相構造の場合、PnBAからなるナノサイズのゴム相の3次元的連続性が高いため、効果的に弾性率を低下させたと考えられた。 他方、樹脂硬化中の相構造形成過程をSPring-8の超小角X線散乱により解析した。相構造の形態は基本的に樹脂組成により決定され、相構造の種は硬化前段階から存在すること、および硬化過程にて相構造サイズが徐々に増加しゲル化点で相構造成長が凍結される機構を明らかにした。 本研究により、ブロック共重合体の自己組織化能力を利用し3次元的連続性の高いナノシリンダー相やナノラメラ相をエポキシ樹脂に目的に応じて形成する主導原理を見出すことができたといえる。
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