研究概要 |
本研究は,ナノ構造の導入によりシリコン系熱電変換材料の性能指数を向上するとともに,ナノスケール材料を評価するための新しい手法の確立を目指している.本年度得られた主な成果を以下に示す. (1) 極薄シリコン層の熱電特性評価 リン原子を10^<19>cm^<-3>以上に高濃度ドーピングした極薄シリコン層に現れたゼーベック係数の増加の原因を明らかにするために,ゼーベック係数の理論的な評価を行った.この計算に用いたモデルでは,不純物バンドの形成,イオン化エネルギーの低下および伝導帯のバンドテイリングを不純物ドーピングの効果として取り入れた.その結果,ゼーベック係数の増大を再現できた.この結果から,不純物バンドの影響なしにフェルミレベルを制御する必要があると考え,現在は,外部電圧によりフェルミレベルを制御しながらゼーベック係数の測定を行っている. (2) KFMによる熱起電力の測定 測定精度を向上するために,新しいプローブ顕微鏡制御装置(SII社製プローブステーションNanoNavi II)を導入した.温度制御もパソコンにより自動化することにより,再現性の向上にも努めた.現在,標準試料としてシリコンウェハに対する測定を行っており,従来の手法で得られたゼーベック係数に近い値が得られている.
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