研究概要 |
本研究は,ナノ構造の導入によりシリコン系熱電変換材料の性能指数を向上するとともに,ナノスケール材料を評価するための新しい手法の確立を目指している.本年度得られた主な成果を以下に示す. (1)極薄SOI層におけるゼーベック係数のフェルミレベル依存性 不純物バンドの影響なしにフェルミレベルを制御するために,極薄SOI層表面に電極を形成して,外部電圧によりフェルミレベルを制御できる試料を作製した.外部電圧を印加した状態にてゼーベック係数を測定した結果,外部電圧の増加に伴ってシリコンのゼーベック係数が増加した.外部電圧印加時のシリコン中のキャリア分布をシミュレーションにより調べた結果,外部電圧に伴うゼーベック係数の増加の原因は,単純なキャリア濃度の変化だけでは説明できないことが明らかとなった.電子およびフォノンのバンド構造など,物性的要因が影響しているものと考え,現在も解析を進めている. (2)KFM(表面電位顕微鏡)によるゼーベック係数測定 ナノ構造のための新しい評価技術を確立するために,温度差を与えたSOI基板の表面電位をKFMにより測定し,ゼーベック係数を評価した.測定条件の最適化により,以前より測定精度を15倍向上させ,測定時間を1/20に短縮させることに成功した.ただし,得られたゼーベック係数の値は,従来の手法の値に比べて2倍ほど大きかった.現在,この結果の原因究明を含めて,測定値の確からしさ・再現性の確認を行っている.
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