研究概要 |
ルチルを還元雰囲気中,またはチタン蒸気中で熱処理した金属的な電気伝導を示す導電性の原子層を挿入した複合材料について,その熱電特性と挿入原子層密度の関連について明らかにした.還元量の増加に伴う挿入原子層の密度の増加に伴い結晶の熱伝導率は飛躍的に減少し,TiO2.0で5.18w/Kmあった格子熱伝導率がTiO1.8の組成では2.04W/Kmと半分以下になった.この格子熱伝導率の実測値から熱伝導フォノンの平均自由行程を見積もったところ,約0.8nmとなり,これは挿入原子層の間隔とほぼ一致する.この結果から,挿入原子層は当初の期待通り,熱伝導フォノンの散乱サイトとして効果的に熱伝導を低下させていることが明らかとなった.また,導電層の増加に伴い,電気抵抗率は絶縁体から10μΩmにまで低下した.一方,電気抵抗の減少に伴いゼーベック係数も減少したため,これらの総合的な値である熱電変換効率(無次元性能指数)はTiO1.90付近の組成で最大値ZT=0.13程度となり,これより還元量が多くても少なくても熱電変換効率は低下した.このZT=0.13という値は本研究のように単純な熱処理によって作成される酸化物の熱伝効率としては非常に大きな値である.さらに本年度は三価が安定である第三元素を添加することによって導電性は示さないが同じ結晶学的な原子配置をとる原子層の挿入に対しても実験を行った。その結果,挿入原子層の密度を第三元素の添加量によっても制御できることが明らかとなった.この結果により,格子熱伝導率と電気抵抗率を個別に制御する方法を確立することができた.すなわち,同じ電気抵抗率を持つ結晶においても更に格子熱伝導率を低下させることが可能となった
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