研究概要 |
熱電材料は可動部を用いることなく熱エネルギーと電気エネルギーを直接相互変換することができる材料である.そのため,従来から宇宙探査機などの省スペース,高信頼性を必要とする部分で用いられてきた.さらに低品位(低温)の熱源からも発電が可能であることから,これまで捨てられていた熱エネルギー,例えば太陽熱,ゴミの焼却熱や自動車エンジンの廃熱など,を電気エネルギーとして回収することが検討されている.しかしながら高いゼーベック係数を示す材料を得ることは容易ではない.最近,高いゼーベック係数を得る方法の1つとして低次元の電気伝導状態を用いる方法が示されている.例えばNa2Co04は結晶的に絶縁層と電導層が積層された構造(層状酸化物)となっており,その2次元性によって高い電気伝導と100μV/Kを超えるようなゼーベック係数が両立しているとされている. 本研究では,シアー構造を持つ欠陥の導入によって電気伝導を示すようになることが報告されている酸化物半導体(具体的には酸素欠損型TiO2)について,電気伝導特性,熱伝導性の詳細を調べることで導電性の面欠陥を持つ材料を熱電材料として利用する可能性を明らかにした. 酸素欠損型TiO2においてZTの最高値として0.3を得ることができた.これは通常の方法で焼結した酸化物としては非常に高い性能である.この高いZT値はシアー構造部で熱フォノンが強く散乱されていることによっていることが明らかとなり,熱フォノンの散乱源を熱処理という簡便な方法で大量に導入することが可能であることが示された.
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