機械的特性および耐熱性に優れた非酸化物セラミックスは、ハードディスクのベアリングボールや半導体製造装置用材料として実用化が進んでいるが、静電気の帯電防止や電極材料への応用などのために、電機物性をそれぞれの部品に適した値に制御することが要求されている。セラミックスの電気伝導の制御法としては、例えば絶縁体に導電性を付与したい場合、20~30vol%の導電性第二相粒子を添加することによって可能である。しかしながら、このような多量の第二相の添加はマトリックス本来の優れた特性を損なってしまう。そこで本研究では、従来の導電性第二相粒子を添加する方法ではなく、5vol%以下の量でも焼結体中を三次元的に伝搬している粒界相を導電パスとして用いることを検討した。マトリックスとして用いた材料は、上記の分野で幅広く応用が期待されている窒化アルミニウム(AlN)および炭化ケイ素(SiC)である。1.導電性AlN:AlNは本来絶縁体であるが、Y_2O_3とCeO_2を焼結助剤として用い、炭素還元雰囲気で熱処理することによって、粒界相にYOCが生成し10^<-3>Scm^<-1>以上の電気伝導を示すことが先行研究で分かっている。本年度は、Y_2O_3-CeO_2複合助剤を用い、静電チャックに応用可能な10^<-11>~10^<-7>Scm^<-1>で制御できる作製条件を検討した。その結果、比較的弱い炭素還元雰囲気およびCeO_2割合が多いほど、低電気伝導側での制御が可能になることを見出した。2.高抵抗SiC:SiCは本来10^3~10^4Ωcm^<-1>程度の半導体であるが、絶縁体の粒界相でSiCを被覆することができればさらに抵抗の高いSiCの作製が可能になると考えられる。本研究では、SiCと濡れ性の良いY_2O_3-Al_2O_3系助剤を用い焼結体を作製したところ、体積拡散が起こり始める比較的低温で加圧焼結を行うことにより、比較的低い10^7Ωcm^<-1>の抵抗を持つ焼結体の作製に成功した。
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