セラミックスの電気伝導の制御法としては、絶縁体に導電性を付与したい場合、20~30vol%の導電性第二相粒子を添加することによって可能である。しかしながら、このような多量の第二相の添加はマトリックス本来の優れた特性を損なってしまう。そこで本研究では、従来の導電性第二相粒子を添加する方法ではなく、5vol%以下の量でも焼結体中を三次元的に伝搬している粒界相に半導体のイットリウム酸炭化物(YOC)を析出させる方法によって、AlN焼結体に電気伝導性を付与することに成功している。しかしながらこの方法では粒界相を酸化物から導電相となる酸炭化物に変化させるために高い焼結温度と長い焼結時間が必要となる。そのため、AlNの粒成長がおこり、強度が低下していた。 本年度は、高強度導電性AlNを作製するために、AlNの粒成長を抑制して、YOC粒界相を合成できる助剤のY_2O_3:CeO_2組成比と焼結条件について検討を行った。助剤としてCeO_2組成の多い1wt%Y_2O_3+4wt%CeO_2(1Y4Ce)を用いたところ、CeO_2組成の増加に伴い粒成長している様子が観察された。これよりCeO_2含有量の高い助剤で、粒界の拡散またはAlNの拡散を促進させることのできる粒界相が生成していることが予想される。そこで、1Y4Ce助剤を用い、AlNの常圧焼結としてはかなり低温の1600℃で焼結を行ったところ、平均粒径を1700℃焼結体の半分以下に抑制し、強度を433MPaまで改善することができた。さらに、この1600℃焼結体はAlNの粒成長を抑えながらも、粒界にはカーボンが拡散し、粒界相として希土類酸炭化物が生成しているため、電気伝導度が1.22×10^<-2>Scm^<-1>まで上昇していることが確認された。このように、CeO_2組成の高い助剤を添加し低温で焼結することによって、導電性AlNの強度を上げることに成功した。
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