前年度は、絶縁体であるAlNに半導体である希土類酸炭化物を粒界相として析出させて導電性AlNの作製を行った。しかしながら、この液相焼結によって形成される粒界相が連続的につながるという性質を利用することによって、導電体ばかりでなく、絶縁体の作製も可能になると考えられる。導電性AlNでは、粒界相は3重点および多点粒界に集中し、それが焼結体中を三次元的につながることにより絶縁体に導電性が発現した。このように、液相焼結の焼結後期では粒界相は3重点および多点粒界に集中する傾向があるが、初期段階では粒界相は二面粒界にも存在する。つまり、緻密化直後の二面粒界に十分粒界相が残っている状態で焼結を止めることによって、導電性粒子でも粒界相で絶縁することが可能になると考えられる。本年度は、通常10^<-5>~10^<-3>Scm^<-1>の半導体であるSiCの液相焼結条件を制御することによって、二面粒界に絶縁相を残存し、高抵抗SiCの作製を行った。 SiCの液相焼結の助剤としては、焼結後にY_2O_3-Al_2O_3系またはY_2O_3-SiC_2系の絶縁体粒界相を形成するY_2O_3とAl_2O_3を用いた。助剤の組成は、モル比Al_2O_3:Y_2O_3=3:5となるように固定し、助剤量を5、7.5、10、15vol.%まで変化させた。そして、焼結は低温でも緻密化が可能で、さらに液相の表面への浸み出しが少ないホットプレス焼結法を用いた。焼結温度を1650~1950℃まで変化させて作製したサンプルの電気伝導度を測定した結果、10、15vol%助剤を加えたサンプルにおいて1750~1850℃の焼結温度域で10^<12>Ωcm程度の高抵抗SiCが作製できることがわかった。さらに助剤組成をAl_2O_3:Y_2O_3=7:1とすることによって、工業的に応用可能な常圧焼結を用いても10^9Ωcm近い緻密な高抵抗焼結体を得ることに成功した。
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