研究概要 |
本年度は,左手系材料開発のための基礎的検討として以下のとおり実施した。 1. 新規に導入したネットワークアナライザを用いて100MHz~20GHzの周波数範囲で材料の複素透磁率,複素誘電率を測定可能な測定システムを構築した。また,これまでに構築している40HMzまでの伝導率測定装置を用いて,表面に酸化処理を施した金属磁性体粒子の導電率を測定し,表面層が半導体的な電気伝導を持つことを示した。 2. サブミクロンNi粒子及びFe-Co合金微粒子(ミクロンオーダー)を用いた金属磁性体複合材料を作成し,上記測定装置を用いて,高周波透磁率・誘電率スペクトルの評価を行った。その結果,Ni複合材料,Fe-Co複合材料において,6GHz~12GHz付近に自然共鳴による負の透磁率を新たに見いだした。また,これまで負の透磁率を確認しているFe-Ni合金複合材料については,厚み0.5~1.0mmのシート状試料(10cm×10cm)を作成し,金属線配列シートと重ねて複合化することにより,10GHz~18GHzの周波数範囲で透磁率,誘電率が同時に負となる可能性を見いだした。 3. 金属線配列構造を用いた電磁波遮へい材料の検討を行い,短繊維配列構造における誘電率の共鳴分散を利用して,周波数選択電磁遮へい材料を構成できることを示した。 4. フェライト系,金属系磁性体の微粒子を合成するための基礎的検討として,銀カルボニル等の熱分解挙動について検討を行った。 これらの検討により,左手系材料構築のための候補として,負の透磁率を有する磁性複合材料の作成と評価が可能となった。
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