新しい癌の治療法として磁性材料の交流磁場中での発熱を利用する交流磁場焼灼療法が期待されている。我々は、発熱特性の優れた新規材料について検討を行なってきており、最近ではイットリウムガーネットY_3Fe_5O_<12>がきわめて優れた発熱特性を示すことを報告している。逆共枕法により前駆体を作成し、1000~1200℃で焼成したところ、1100℃で最も高い発熱を示した。これは、低温では立方晶と斜方晶の混合相であるが、1100℃を境に斜方晶が無くなり、それ以上の焼成では著しい粒子成長が起こることが関係していると考えられる。さらに、Y^<3+>のサイトにGd^<3+>を置換したY_<3-x>Gd_xFe_5O_<12>系について検討を行ったところ、X=0であるY_3Fe_5O_<12>と同じように1100℃焼成が最も高い発熱特性を示した。しかし、X=1.0で最も高い発熱特性を示したもののそれ以上のXの増大にともない発熱特性は低下し、X=3.0であるGd_3Fe_5O_<12>では、最も高い磁気モーメントによる高い発熱を期待していたが、全く発熱しなかった。これらの系の、発熱特性については明確でなく、B-H特性におけるヒステリシス損失の依存性はほとんどみられなかった。一方、様々なフェライトについてビーズミルによる物理的な微粒子化が有効であることについても明らかにしてきている。FeFe_2O_4やMgFe_2O_4について検討を行い、さらに、Y_3Fe_5O_<12>についてビーズミルを用いて粉砕し様々な粒子径、結晶子径のものを作製し優れた発熱特性が得られることが明らかになっている。この粉砕についてはヒステリシス損失の依存性がみられるが、他の因子の影響についても今後検討を進める必要がある。さらに、ビーズミル粉砕した試料についての低温仮焼により、いっそう発熱特性が向上することが明らかになり、これは粉砕により形成した超常微粒子が成長したことによると考えられる。
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