金属材料の機械的性質は、微視組織要素の特性に支配されている。したがって、強度、靭性、信頼性に優れる材料を開発するためには、材料を構成している各微視組織要素の機械的性質を計測し、それに基づいて材料組織の階層的な設計をマルチスケール的に行うことが重要となる。本研究では、金属材料を構成する微視組織の機械的性質を評価するため、(1) 材料中の階層的な構成組織要素の中で、目的とする微小領域からミクロンサイズの超微小試験片を切り出して、その機械的性質を評価する試験法を開発する。また、(2) 開発した手法を用いて、複相合金(ラメラ構造を有するTiAl基合金、Mg-Zn-Y合金、複相鋼飯)の構成組織ならびに相界面の機械的性質(主として強度)を明らかにし、これとバルク材の強度を比較することによって、強度に及ぼす試験片寸法の影響を調べ、これらの結果を統合してマルチスケール的な強度設計の指針を確立させる。平成21年度は、その第一段階として、ラメラ組織を有するTiAl合金、長周期析出相(LPSO相)で強化したMg合金ならびに複層鋼板からミクロンサイズの試験片を切り出して引張及び破壊試験を行い、その強度・破壊特性を計測する手法を開発した。その結果として、TiAl合金については、ラメラ間の接合強度とその界面構造の関係を明らかにした。Mg合金については、LPSO析出相と母相の引張強度の計測を行うことができた。さらに、複層鋼板については、硬質層、軟質層のそれぞれについて、引張強度を計測することに成功した。上記の成果はマルチスケール概念に基づいた材料の強化設計の基盤データとしてきわめて有用なものとなる。
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