金属材料の機械的性質は、微視組織要素の特性に支配されている。したがって、強度、靭性、信頼性に優れる材料を開発するためには、材料を構成している各微視組織要素の機械的性質を計測し、それに基づいて材料組織の階層的な設計をマルチスケール的に行うことが重要となる。本研究では、金属材料を構成する微視組織の機械的性質を評価するため、材料中の階層的な構成組織要素の中で、目的とする微小領域からミクロンサイズの超微小試験片を切り出して、その機械的性質を評価する試験法を開発する。また、2.開発した手法を用いて、複相合金(ラメラ構造を有するTiAl基合金、Mg-Zn-Y合金、複相組織鋼)の構成組織ならびに相界面の機械的性質(主として強度)を明らかにする。昨年度までは、上記1及び2の計測法の確立までを主体的に行った。そこで平成23年度は、計測データの拡充を行うとともに、各構成相の強度を明らかにし、マルチスケール解析のための基礎データを得ることを目的とした。まず、データの拡充にあたり、マイクロスケールでの新しい歪計測法を開発した。次にこの成果を基に、TiAl合金については、ラメラ間の界面強度が、γ/γ界面とγ/α_2界面で異なることを明らかにし、強靭化設計において界面強度が重要であることを示した。Mg合金については、LPSO単相の試験片を切り出し、その機械的性質に異方性があることを明らかにした。さらに、複相鋼については、各構成相と界面の機械的性質を明らかにした。以上の結果は、金属材料のマルチスケール強化設計にきわめて有用なものである。
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