研究概要 |
本年度は,生成熱分離型および非固溶体型の材料設計により、半導体ナノ粒子およびマトリクスとして各種材料の組み合わせによる薄膜作製を行うと共に、前年度において得られた有望材料について光電的評価を行った。その結果、PbSe-ZnSe系非固溶型材料をホットウォールデポジション法により一括成膜した際、25-50nmサイズのPbSe粒子がZnSeマトリクス中に孤立分散し、明瞭に相分離する複合構造薄膜を形成するが明らかになった。また、p型Si基板上に作製したn型(PbSe/ZnSe)複合構造薄膜は光電変換特性を発現し、300-1100nmにおける光電流スペクトルは、PbSe濃度の増加と共にピーク位置が長波長側にシフトすることが明らかになった。また、成膜法としてスパッタリング法を用い、ナノ粒子としてGe,マトリクスとしてNb酸化物から構成される生成熱離散型複合構造薄膜を作製した。その結果、Ge濃度が約2.5at%において、Nb酸化物はNb_2O_5に単相化すると共に光透過率は向上する。すなわち、添加したGeは、マトリクスとして好適なNb_2O_5の生成を促進する効果を有する。また、Ge濃度の増加と共に光吸収端は長波長側にシフトし、太陽光スペクトルの最大強度付近に光学バンドギャップを制御可能であることを明らかにした。したがって、複合構造薄膜におけるGeは、マトリクス構造の最適化と量子サイズ効果発現の役割を同時に果たす。さらに,電極材料として,可視光領域に光吸収端を有するヘマタイト(α-Fe_2O_3)などの鉄酸化物相が、Ge微量添加および成膜中の酸素分圧によりナノ複合構造化することを明らかにした。
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